【日立市】大甕神社の山桜

拝殿前の鳥居脇に咲くヤマザクラの大樹。今でも見事な樹観ですが、昔は株立ちの幹が他にもあり、もっと巨大でした。この個体とほとんど同じ葉芽と花のヤマザクラが、御神体である岩山から拝殿の屋根上に枝を伸ばして咲いています。岩場から成長しているので、神社では「ねばり桜」として大事にされているようです。いわゆる「ど根性桜」です。


寿ぐ桜(ことほぐさくら)

神社とヤマザクラの関係は古く、そもそもヤマザクラは神様の依り代です。サクラの語源に、春に里にやってくる稲(サ)の神様が憑依する座(クラ)という説があります。昔の人々はヤマザクラの開花を、種をまいたり苗代をしたりする農作業の暦としてきました。ヤマザクラは山の神様そのものであり、御神木として神社に植えられてきました。昔の人々のお花見は、神様にお礼をする信仰・神事祭礼でもあったのです。これは日本最古のお花見の記録とされる『常陸風土記』(721年)からも読み取ることができます。東日本最古の花見名所である桜川の櫻川磯部稲村神社では、花を愛でることを寿ぐ(ことほぐ)といいます。私たち現代人には失われつつある概念かもしれませんが、こういった昔の人々の桜花観(おうかかん)を知るだけで、神社のヤマザクラを観る目が変わると思います。